ビジネスシーンはもちろんのこと、成人式や結婚式などのフォーマルな場面でも着用することの多いスーツは、自分の体にフィットするものを選ぶことで、着たときに背筋がピンと伸び、いつもより気持ちに気合が入り、自信が体の底から湧き上がってくる感覚を覚えます。
海外のビジネスマンたちのあいだでは、スーツのことを“ビジネスマンの戦闘服”と呼んでおり、スーツの素材や色柄、サイズ感、靴やネクタイなどの小物類とのバランスや相性などをとても重要視しています。
しかし、いくらスーツを格好良くピシッと着こなしたとしても、ホコリや汗ジミなどの汚れやニオイ、シワが付いていたりすると、相手を不快にさせたり、悪い印象を抱かせてしまう恐れがあります。
そこで、今回はスーツの汚れの簡単な落とし方と取り方をまとめてみましたのでご紹介します。
スーツに付着した汚れの落とし方
ホコリやゴミ
スーツの主な素材は天然のウールです。ウール素材は復元力に優れており、着用した際にシワや型崩れができてしまっても、持ち前の復元力で美しいシルエットを保つことができます。
しかし、ウール素材には1つ欠点があり、うろこ状の繊維が内部で湿気を吸収するという特徴があります。そのため、空気中を漂うホコリやゴミを溜め込みやすく、お手入れを怠ってしまうと生地を傷める原因となります。
スーツをホコリやゴミから守るためには、毎着用後に必ずブラッシングを行うことが大切です。着用後にスーツをブラッシングすることで、生地の復元力が高まり、シワを防ぐことができます。
①スーツを専用のハンガーに掛け、ポンポンと軽く叩いて付着したホコリやゴミを浮き上がらせます。
②繊維に沿って上から下へ向かって、撫でるように優しくブラッシングします。
③衿をめくり、上衿を自然に立てた状態でラペル側に手を添えて返り線の上から下へと向けて、撫でるようにブラッシングします。
④後ろ見頃も同じように上から下へと繊維に沿って撫でるように優しくブラッシングをしてゆきます。
⑤ブラッシングが終わったら、スーツに含まれている湿気を取り去るために風通しの良い場所で陰干しを行いましょう。
・スーツに湿気が溜まっていると、ホコリやゴミをキレイに落とすことができませんので、ブラッシングを始める前に風通しの良い場所で陰干しをしてから行いましょう。
・しっかりとスーツのホコリを取り除きたいときは、
①下から上にブラッシングをかけて繊維の奥深くに入り込んでしまったホコリを掻き出す
②上から下へとブラッシングを行う
この手順でブラッシングを行ってください。すると、ホコリやゴミをキレイに払い、毛並みを揃えることができます。
・お手入れを忘れがちなポケットの内部にはたくさんのホコリやゴミが溜まっていることが多いので、ポケットを裏返してブラッシングをしてください。
・スラックスの裾がダブル仕立ての場合、折り返し部分にホコリが溜まっていることがありますので、優しく丁寧に掻き出しましょう。
・ブラッシングを行う際は、スーツの裏側に手を当てながら行うとキレイにかけることができます。
・ブラッシングに使用するブラシは、やや硬めの豚毛などがオススメです。
ファンデーション
通勤にバスや電車などの公共交通機関を利用されている男性や就活中でメイクやスーツに慣れていない女性の場合、スーツの首周りや襟元、袖口などにファンデーションが付いてしまうことがあります。
ファンデーションの成分は油ですので、
・油性のシミ抜きに使用されるベンジン
・台所用洗剤
などを使って落としてゆくのがオススメです。
クレンジング剤を使った落とし方
クレンジング剤には、オイル・リキッド・ジェルなど様々な種類がありますが、スーツに付着したファンデーションの汚れを落とすのであれば、洗浄力の高い「オイル」を使用するのがオススメです。
①スーツの汚れが付着した部分にタオルを当てます。
②クレンジングオイルを毛先の柔らかな歯ブラシに付け、ファンデーションが付着した部分を裏返して、汚れが付着した面とは反対側の裏側から軽く“ポンポン”と叩きます。
③タオルにファンデーションの汚れが移りますので、キレイな場所と入れ替えて再び“ポンポン”と裏側から軽く叩いてゆきます。
④クレンジングオイルにファンデーションの汚れが溶け出してきたら、歯ブラシに水を付けて“ポンポン”と叩いてください。
⑤仕上げに、水で濡らして固く絞ったキレイなタオルでファンデーションが付着した部分をぼかすように叩いて輪ジミを防ぎ、自然に乾くのを待ちます。
ベンジンを使った落とし方
ドラッグストアやホームセンターなどで手に入るベンジンは、よく油性のシミ抜きに使用されます。ベンジンを使ったファンデーションのシミ汚れの落とし方はクレンジング剤と同様の手順ですが、
・絶対に擦って落とさない
この2点には気を付けてください。
台所用洗剤を使った落とし方
クレンジング剤でもベンジンでも落とせなかった場合、台所用洗剤を使ってみましょう。落とし方は、クレンジング剤とベンジン同様、ファンデーションが付着したスーツにタオルを当てて、裏側から“ポンポン”と軽く叩いて落としてゆきます。
直接ファンデーションの汚れに台所用洗剤を垂らしてしまうと、シミが広がって輪ジミの原因となりますので、絶対に汚れの裏側に洗剤を垂らすようにしてください。
ファンデーションが付着したばかりの軽い汚れならば、キッチンで使用している乾いた新品のスポンジを使って、汚れの上から“トントン”と叩くと落ちることがあります。
ファンデーションの汚れは非常に頑固な油汚れですので、完全に汚れを取り去ることはできません。
また、どの方法も色落ちや輪ジミ、生地を傷める原因となりますので、ファンデーションの汚れをキレイに取り去りたい方は、洗濯のプロであるクリーニングショップを頼ることをオススメします。
汗ジミ
ビジネスマンにとって、スーツの汗や皮脂汚れは大敵です。しかし、外出の多いビジネスマンや暑さの厳しい夏場は、どんなに対策を講じても汗や皮脂汚れがスーツに付いてしまいます。
スーツが汗を吸い込んでしまった場合、
②汗が染み込んだ部分を濡れタオルで“トントン”と叩いてください。
③叩いた部分に霧吹きで水を吹きかけ、叩いたときに濡れてしまった部分をぼかします。
④乾いたタオルでスーツから水気を取り除きます。
⑤除菌消臭スプレーを吹き掛けて、風通しの良い場所で陰干しにします。
汗が染み込んだ部分を両側からタオルで挟める場合は、濡れたタオルと乾いたタオルで挟み込み、乾いたタオル側に水を含ませるように押さえると、汗を取り除きやすくなります。
スーツのシワ予防
スーツの素材には復元力のあるウール素材が使用されており、着用時にシワや型崩れができてしまっても、スーツ自身が持つ復元力によって美しいシルエットへと回復することができますが、ジャケットやスラックスに深いシワが付いてしまった場合は、スーツ自身の復元力では回復することができません。
自宅にスチームアイロンやスチームブラシがある方は、ハンガーに掛けたスーツに軽く当てることで簡単にシワを伸ばすことができますが、どちらも自宅に無い場合はどうしたら良いのでしょうか。
軽めのシワが付いてしまった場合は、スーツを脱いだその日のうちに霧吹きで湿気を与えて自然乾燥することで、スーツ自身の復元力によってシワを取り去ることができます。
スーツ自身の回復力ではどうにもならないシワが付いてしまった場合、
②両袖部分をクリップ式のハンガーで留めます。
③500mlのペットボトルに200ml程度の水を入れ、手持ち部分のあるビニール袋に入れます。
④③をクリップ式のハンガーに掛けて、しばらく放置します。
⑤水を吹きかけた部分が乾いたらクリップ式ハンガーを取り外します。
この方法でシワを防ぐことができます。
ただし、長時間クリップ式ハンガーに水をぶら下げていると、スーツの縫製部分の目が開いてしまいますので、水を吹きかけた部分が乾いたら速やかに取り外してください。
スーツの汚れには簡単な落とし方や取り方があることをご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。ビジネスマンにとってスーツは、円滑なビジネスを進めてゆくうえで欠かせないアイテムのひとつです。
見も心もキリッと引き締め、気持ちに気合と自信を与えてくれるスーツは常に清潔に保つようにし、ホコリやゴミ、シミ汚れひとつない美しいスーツを身にまとい、充実した日々を過ごしてみませんか。